その時、ワインを飲みほして vol.3 村上春樹訳「ティファニーで朝食を」

  • 2010.12.30 Thursday
  • 00:00
JUGEMテーマ:キャリアデザイン

村上春樹訳「ティファニーで朝食を」
〜人生を描きかえる〜


                            [2010.12.28執筆] 新作



これまでの人生のモティーフともいえる作品を
村上春樹さんの新しい訳で再読しました

人生は描きかえられるという感慨がありました

おそれいります、本文は公式ブログ「人材開発プロデュースの森」
村上春樹訳「ティファニーで朝食を」をご覧ください 



【MEMORY】

その時、ワインを飲みほしてvol.1 「ローマの休日」
ひとりの女性の自立を表現したオードリー・へップバーン
B・エドワーズ監督「ティファニーで朝食を」でも
女性の自立を描いています

17歳ではじめて観た時から、大好きな作品なのに
そのことに、いままでは気づかなかった…

2010年のクリスマスに届いた友人からのメールをきっかけに
村上春樹さん訳の「ティファニーで朝食を」を一気に読みました
エッセンスがすっと入ってきました

観る度にせつなくなる、映画「ティファニーで朝食を」
ダイジェスト版をYou Tubeで見つけました

2分50秒、ヘップバーンの無垢な演技に泣けます!

その時、ワインを飲みほして vol.2 父たちに捧げる「仮面の男」

  • 2009.03.18 Wednesday
  • 09:45
JUGEMテーマ:キャリアデザイン

父たちに捧げる「仮面の男」
〜父の愛に守られて巣立つ〜
 

                                                    [2002.1.27執筆/2009.3.18改定]
                                                                                未掲載記事


 1991年10月1日、私の父は58歳で人生の幕を下ろした。父を失ってはじめて、いかに父に守られて生きていたかを知った。そして、社会の現実に直面し、それらに立ち向かわなければ生き抜けない事実を学んだ。父は死をもって、私を自立させてくれた。

 
父を想うとき、映画『仮面の男』の美しい映像がよぎる。大好きなレオ様ことレオナルド・ディカプリオが2役の主役を演じ、ハリウッドとフランスの芸達者たちが17世紀のフランスを舞台に大暴れする歴史スペクタクルである。


 17世紀のフランスといえば、太陽王と呼ばれるルイ14世の治世であり、暗黒の中世にあって光明射す時期とされている。けれども、『仮面の男』では大胆に、史実の書き換えを行った。本当のルイは大変な暴君だったというのだ。

 暴君ルイは飢饉による飢えで苦しむ民には腐ったリンゴを与え、連日連夜の宴に酔いしれている。美しい女性を愛人にしては捨て、私利私欲のために人を殺すのも厭わない。そんなルイにはフィリップという双子の弟があった。フィリップは、血族の争いを怖れたルイによって鉄の仮面を被せられ、バスチーユ牢に幽閉されていた。

 ルイが遊興の日々を過ごす水面下で、イエズス会のリーダーが”革命”の計画を進めていた。獄中のフィリップと暴君ルイを入れ替え、フィリップを理想の王に仕立てるという”血を流さない革命”である。

 リーダーはかつて銃士として名を馳せた男、『三銃士(アレキサンドル・デュマ作)』のアラミスだった。彼は三銃士の仲間のポルトス、アトスに加え、従者だったダルニアンに革命の協力を呼びかける。アラミス、ポルトス、アトスの3人はすでに引退の身だが、後輩のダルタニアンは王宮の銃士隊長として暴君ルイに誠心誠意、尽くしている。 ”血を流さない革命”への参画を乞われて、きっぱりと断る。

”誓いは貫いてこそ誓いだ。
      ルイといえども見捨てられない。命にかえても国王を守る”


 名優ディカプリオが演じるルイの暴君ぶりはおぞましいばかりだ。それでも、ダルタニアンはアラミスたちの陰謀から、ルイを守り続ける。間一髪の国王誘拐の邪魔をして、フィリップを捕らえたのもダルタニアンだ。

 そんなダルタニアンの誓いは、忠誠心からばかりではなかった。彼とルイの間には、秘められたつながりがあったのだ。それは若き日のこと、ダルタニアンは皇太后アンヌと許されぬ恋に落ち、ルイとフィリップが生まれた。双子を嫌う習慣から、弟フィリップは闇へと葬られる。ダルタニアンは銃士として、王位継承者であるルイを守り続けてきた。


 ふりかえれば、銃士を引退し悠々と暮らすアトスをダルタニアンが訪ねるシーンでのこと。旧友の久しぶりの訪問を喜び、ワインをふるまうアトス。これを受けるダルタニアン。アトスは成長した息子の近況を誇らしげに語る。

 ひと息にワインを飲みほして、ダルタニアンはアトスに告げた。暴君ルイがアトスの息子を戦さの最前線に送ろうとしていると…。ルイは息子の恋人に横恋慕し、恋敵を抹殺しようと考えていた。アトスは逆上し、ルイを罵倒し、ダルタニアンに詰め寄る。

”父親の気持ちが分かるか?
       安らかに眠る子の髪に口づけ、成長を見守る気持ちが!”

 
ダルタニアンの苦い表情。

”父である喜びを味わったことはない”

 彼は、目の前にいる息子を抱きしめることも口づけすることも許されず、せめて忠誠心という仮面を被って、国王である息子に仕え、身を呈して守ってきたのである。しかも、立派な王に育って欲しいと願う息子は、尊敬されない暴君だ。だからこそ、ルイを見捨てられるはずがない。そこにあるのは忠誠心ではなく、父の愛、父としての責めである。


 そこに、もうひとりの息子が現れた。志に生きるアトスに「王の心をお持ちだ」と言わしめた、フィリップだ。ダルタニアンには、生まれた子が双子だったことを知らされていなかった。突然現れた、理想の王たる資質をもつ息子…。ダルタニアンは父の誇りを知り、フィリップの命を守るために、ルイの刃に倒れる。

”こんな最期を望んでいた”

 皇太后への愛、先王と祖国への裏切り、息子と呼べない息子への責め…。ダルタニアンは国を守り、国王を守り、息子を守り続けた人生に幕をおろし、静かに息を引き取る。辞世の言葉はただ「我らはひとつ、偉大なる王のために」

 ルイは隠遁させられ、フィリップは慈悲深いルイとして王位に就く。ダルタニアンが命を賭して助けた息子は、太陽王ルイ14世へと巣立ったのだ。

 父たちは仮面をかぶる。それは鉄の仮面のように、父の想いを隠してしまう。けれども、父たちは鉄の仮面の下から、子どもたちを見守っている。いつも側にいなくても、父のまなざしはいつも私たちに注がれている。幼い子どもたちはおおかた、父のまなざしに気づかない。けれども、その守りがあればこそ、子どもたちは健やかに育ち、やがて巣立っていけるのである。

 巣立ちの日、父たちは一抹のさみしさとともにわが子を誇りに思うだろう。そして、父であることの喜びをかみしめるに違いない。遠い世界へ旅立った私の父に、巣立ちの姿を見せられなかったことが心から悔やまれる。


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その時、ワインを飲みほして vol.1 心はいつも「ローマの休日」

  • 2009.03.17 Tuesday
  • 14:43
JUGEMテーマ:キャリアデザイン

心はいつも「ローマの休日」
〜使命に生きる人生を選ぶ〜

いまがもしも辛いのなら
それは、いまを越えて
幸せな未来へ近づくための試練だから
 
泣きたいときには、空をあおごう
きっと道はつづいている 
2013.1.5   


[2002.12.24執筆/2008.3.17改訂]
 2003.1 UFJ銀行サイト”インフォウェーブ”掲載記事


ローマをいまだ訪れたことがない。ビジネスで訪ねる縁もなく、働き盛りが休暇を過ごすには遠すぎる。けれども、ローマ! その響きは甘く、少しだけほろ苦い。目を閉じれば、心のスクリーンに続く石畳を男女ふたり乗りのスクーターが迷走する。女は故オードリー・ヘップバーン、男はグレコリー・ペック。監督ウィリアム・ワイラーの名画『ローマの休日』を初めて鑑たのは高校生の頃、テレビでの字幕放送だった。

オードリー扮するアン王女は公務にあぐね、訪問先ローマの官邸を抜け出して街へ出る。新聞記者ジョー・ブラッドレーはスクープを狙い、身分を隠して、王女のたった1日の休日をエスコートする。ローマの名所、市井の暮らしぶりがテンポよく流れる。ふたりは恋に落ちる。

あの頃は、この映画を「身分違いのせつない恋物語」「大人のおとぎ話」と思って観ていた。モノクロームのローマは美しく、メロドラマにはうってつけだ。オードリーは当時24歳、可憐な容姿、無邪気なしぐさ、気品あふれる笑顔。初主演のこの映画でアカデミー賞、ゴーデン・グローブ賞の各主演賞を受賞した。共演のグレコリー・ペックもスマートな演技で、初々しいヒロインを支えた。

オードリーが63歳で他界した1993年、BS放送が追悼特集を編んだ。十数年ぶりにこの映画を鑑た私は、30代半ばに近づいていた。『ローマの休日』はもう、おとぎ話には見えず、ひとりの女性の自立を描いた秀作に見えた。

わけもなく涙があふれた。男のアパートでテーブルワインを飲むシーンで、別れのキスシーンで、そして何よりも官邸に戻った王女と3人の侍従に対峙するシーンで! 24時間の不在をとがめる侍従の言葉をさえぎって、アン王女はきっぱりと言い放つ。

”祖国と王家への責務を思わなければ、今夜、ここへは戻ってきませんでした”
 

その瞬間、大きな瞳がゆらゆらと揺れる。崩れ落ちそうな心・・・。心の揺らぎを抑えるように、唇がきりりと引き締まる。凛々しい立ち姿だった。彼女は働く人として自立したのだ。決められた公務を決められたとおりに繰り返す、操り人形のような日々に疲れて街へ出た彼女は、1日の休日を経て殻を脱いだ。それまでと変わらない毎日を、明日からポジティブに生きていくだろう。

そして今年(2002年当時)、オードリーの没後10年を迎える。録画した追悼特集を再びデッキにかけて、『ローマの休日』を鑑る。美しいローマ、美しい恋人たちがいきいきとよみがえる。

アン王女は官邸に戻ったその夜、夜食のミルクとクッキーを拒み、侍女の伯爵夫人を退室させて、窓辺に佇む。街は近くて遠い。

それはつい先ほどまで、つかの間の休日を楽しんだ街だ。つい先ほどまで、愛しい男といた街だ。彼女は男に、「料理は上手いのよ」「お掃除もアイロンがけにも自信があるわ」「誰かにしてあげるチャンスがなかっただけ」と強がった。男は「引越しをしなきゃいけないね、キッチンのある部屋へ」と悲しげに茶かした。「そうね」と細く答えて、分厚いコップの赤ワインを飲み干した…。

この時、彼女は王位継承者としての人生を選んだのだ。父王が40年間務めてきた責務、生まれついて負った人生を自らの意思で選ぼうと決めた瞬間だ。ひとつの人生を選び、もうひとつの人生を捨てた。

選ぶことは捨てること・・・。40歳を過ぎた私(2002年当時)の目に、人生のせつなさが映った。新たな涙があふれた。ふたりの恋は麻疹
(はしか)だったかもしれない。ポーカーで小遣いを稼ぐ男と箱入りの王女は似合わない。恋は終わったからこそ美しい。

けれども、彼女にとって、その恋の終わりはブラッドレーとの別れを意味するものではなかった。彼を含め、これから出会ったかもしれないすべてのブラッドレーとの平凡な人生との別れ、カフェでお茶を飲んだり、ウィンドウショッピングをしたり、雨にぬれながら歩いたり、貧しくても平凡な人生との別れであった

ワイラー監督は、選べばこそ捨てねばならぬ人生と、その痛みを描くことに成功した。

映画は記者会見のシーンで幕を引く。記者たちに「今回の訪問旅行でもっとも素晴らしかった都市は?」と尋ねられ、彼女は言葉につまる。侍従に促され、「いずこも忘れ難く」とお定まりの社交辞令を語り始め、「優劣を決めるのは難しく・・・」と途切れる。

”ローマ!” 

会場のざわめきがさざなみのように広がる。自らの意思で王位継承への道を選んだアン王女は、もはや操り人形ではない。自らの意思を伝える勇気も持ち合わせている。会場には新聞記者として訪れたブラッドレーの姿もある。見つめ合うふたり・・・。

”私はこの滞在を、天国に召された後まで慈しむでしょう”

 やがて、きびすを返し立ち去る頬に涙が光る。こぼす涙の数だけ、彼女はこれからも強くなっていく。そして、いつどこで誰といても自由である。ブラッドレーと過ごしたその日のように、心はいつも『ローマの休日』だ。 

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