心ときめく春なのだから 〜アウトドアに似合うワイン〜

  • 2012.03.12 Monday
  • 15:58
JUGEMテーマ:ワイン


心ときめく春なのだから

〜アウトドアに似合うワイン〜

[東海総研マネジメント 1999年3月号掲載]

 陽射しがぽかりぽかりと明るくなると、外の空気が恋しくなる。まだまだ風は冷たいけれど、そろそろピクニックに出掛けよう。もちろん、バスケットにはワイン。こんな時には、カリフォルニアワインを連れて行くのが、私の流儀だ。

 自宅から1、2時間のドライブでたどり着ける奥三河の山間は、鮎やら猪やら、季節の味が豊富である。鮎の季節にはフュメ・ブラン種の白。ボタン鍋には土臭いメルロー種の赤。太陽をたっぷり浴びたカリフォルニアのワインたちには、隠し味のように甘みがあって、奥三河の味噌味にも結構馴染んでしまう。

 もっとも、カリフォルニアワインだけがことさらピクニック向きというわけではない。カリフォルニアは乾いた太陽と爽やかな風の国。その太陽や風に身をさらして巡った、ナパやソノマのワイナリーで作られるワインは、私にとっては、素敵なピクニックの象徴なのだ。

 ところで、アウトドアといえばバーベキュー。仲間のために美味しいワインを探したくて、恵比寿ガーデンプレイス内のワイン専門店「カーブ・タイユバン」のソムリエ荻原初男さんに相談してみた。
荻原さんによれば、アウトドア向きのワインとは、第一に価格が極端に高くないもの、第二に酸味が柔かくてコシがあるもの、第三に野性味のあるもの、そして、人気の赤に加えて白も1種は用意したい、とか。

 具体的には、赤ならば注目の南仏ラングドック、ルーションやコルビエール、白ならば仏ローヌ。荻原さんのお奨め銘柄は、赤はコルビエールのシャトー・ラストゥールに加えて、ブルゴーニュ・ボージョレ村のムーラン・ナヴァン・ヴィエイユ・ヴィーニュ(ジャナン社)。ボージョレはどちらかといえば軽い赤だが、これは樹齢70年のガメイ種から作られる珍品で、「究極のボージョレ」。野性的な香りと力強さが、濃厚なお肉にも負けない。一方、白はフランスでも手に入りにくいケランヌ村の白。濃厚な香りとキレのよい酸、腰の強さが魅力であるという。

 さて、桜のつぼみがふくらむと、公園の縄張り争いがはじまる。コンビニでポテトチップやおかき、お弁当を買い込んだら、花見でワイン。こんな時には、ロゼのワインを調達したい。桜の花びらと仲良しの色合い、気軽なメニューにも合うオールマイティな味わい。ロゼ・ダンジュの甘い印象が強いせいか、男性は嫌うけれども、ロゼは便利なワインである。仏プロヴァンスのロゼなら、酸味はやや強いが、決して甘くない。

 名古屋パルコ南館にもお目見えしたワインショップ「エノテカ」の本社マネジャー阿部健太郎さんは、発泡性のロゼならばさらにお洒落、と薦める。クレマン・ド・ブルゴーニュ(パリゴ社)やブベ・ブリュット・ロゼ(ブベ社)など、アウトドアには値段も味わいも手軽な方が似合う。

 さあ、心ときめく春なのだから、大好きな誰かを誘って、何んにも考えないですいすい飲めるワインを選んで、外へ出掛けよう。もしも、あなたがワイン通でも、今日だけはウンチクは部屋に置き去りにして。
 
<今月のワインリスト>

 アウトドアには、明るいイメージのワインを選びたい、という丸栄百貨店の美人ソムリエール西藤美佐緒さん。食事を選ばない屈託のなさも必要、というわけで、にカリフォルニアとイタリアから、「らしいワイン」を選んでくれた。

 まずはカリフォルニアから、フェッツァー社ベル・アーバー・シリーズのホワイントジンファンデル。アメリカならではの葡萄品種ジンファンデルから作ったこのロゼワインは、イチゴのようなフレッシュな香り、甘酸っぱい口当たり。まるで、アメリカの農家の奥さんのように大柄でいて、どことなくチャーミングな味わいがアウトドア向きだ。

 そして、イタリアのすいすい飲めるワインといえば、オルヴィエート地区の白。香りも飲み口も癖がなくて、アウトドアの気軽なメニューにもよく合う。オルヴィエートといえば辛口白ワインが中心だが、アマービレは「中甘口」。

 但し、中甘口とはいえ、辛口好みの男性にはやはり甘い。でも、西藤さんによれば、買い物に来て「あまり甘くないワインを」と所望する女性に、このアマービレを薦めると、たいていは再購入につながるという。男と女の甘い辛いは、恋と一緒で微妙なものだ。ワインを嗜みはじめた彼女のために、ぜひともご調達をお勧めしたい。

'97 ベル・アーバー ホワイトジンファンデル(フェっツアー) 1,170円
'97 オリヴィエート クラシコ アマービレ(ルフィーノ) 1,260円
 *ワインの価格は1999円当時のものです。

取材協力:丸栄百貨店/サントリー株式会社 

ぬくぬくの湯気の向こうには 〜鍋ものとワインの楽しみ方〜

  • 2012.02.08 Wednesday
  • 21:27
JUGEMテーマ:ワイン


ぬくぬくの湯気の向こうには

〜鍋ものと気楽に楽しむワイン〜

[東海総研マネジメント 1999年2月号掲載]

 寒い夜にはやっぱりお鍋。

 ふたりきりでも仲間同士のパーティでも、ぬくぬくの湯気を囲めば、心まで温かくなる。旬の魚で寄せ鍋にするもよし、お肉をたっぷりと味わうもよし。そこに、ブームのワインを取り入れれば、ちょっと気のきいた演出ができる。

 ところで、鍋ものと言っても幅が広い。すき焼き、水炊き、てっちり、寄せ鍋など。ワインをお鍋の席に差し入れするならば、メインの食材に合わせて選ぶのが基本だ。たとえば、鶏の水炊きには、風味がシンプルで、味わいにボリュームのあるものを…。ブルゴーニュ・マコン地区の白や、カリフォルニアのソーヴィニオン種の白。値段も手頃で、汗をふきふき、ガブガブと飲みたい席に向くタイプだ。

 てっちりには、南フランスの白。ローヌ地方のシャトー・ヌフ・ド・パープのように、酸味が柔かくて、濃厚なタイプが合ってくる。すき焼きには、凝縮感のある熟成した赤が欲しい。ボルドーの上級シャトーも悪くないが、カリフォルニアやチリの、こってりしたタイプの方が打ち解けたムードには合う。

 そういえば、昨年度の話題小説「失楽園」で、心中するふたりが最後に食したのは鍋ものだった。鴨鍋に、ボルドー地方の五大シャトーとして知られる、シャトーマルゴーを合せていた。シャトーマルゴーはとても素敵なワインだ。繊細でエレガントな個性が、世界中のワイン愛好家を魅了し続けている。しかし、鴨料理にはボルドーではなく、ブルゴーニュ地方の赤を合わせるのが定石とされる。

 ブルゴーニュには、五大シャトーに負けない、ロマネ・コンティというワインがある。この素晴らしいワインを生む畑の所有権をめぐって、マリー・アントワネット妃と義理の息子のコンティ王子が争った逸話もある。1瓶数十万という高値を含め、この世で最後に飲むなら、ロマネ・コンティの方がよかったのに…。そこで、鴨鍋とブルゴーニュの相性を確かめることにして、仲良しの板長さんが腕をふるう割烹に出かけた。鴨鍋は板長さんの十八番(おはこ)だ。

 ロマネ・コンティには手が届かないので、ブルゴーニュの男性的な赤、ポマール(トロ・ボー社/87年)を持っていく。熟成が進み、酸味の中にたくましい渋味が溶け込みはじめていた。鴨のきめがあってダイナミックな脂によく合った。でも、マルゴーもブルゴーニュも、甘みのある鴨鍋の出汁(だし)にはあまり合わないように思う。南仏ラングドックあたりの甘み感の強い赤や、いっそ甘い白が合うかもしれない。

 そもそも、鍋ものは最後の晩餐向きではない。ふたりきりにしろ、仲間同士にしろ、鍋の湯気の向こうにはとびきりの笑顔が欲しい。だから、合わせるワインも気取ったタイプ、堅苦しいタイプよりも、うんと気軽で愛敬のあるタイプの方がよさそうだ。勝沼産、五一産の一升瓶ワインを空けて、時には豪快に騒いでみよう。


<今月のワインリスト>
 
 コストパフォーマンスのよさが魅力の「新世界」のワイン。カリフォルニア、チリ、アルゼンチンなど、新興の生産地のワインが評判を集めている。
その中で、カリフォルニアは「もう新世界ではない」と言われる実力。老舗の国々よりもむしろ、合理的なワインづくりをしており、品質が安定している。
フェッツァー社のヴァラエタル・シリーズは、契約栽培をしている約250の「減農薬」農家の畑でできるぶどうから作られる。このシリーズのひとつ「ソーヴィニヨン・ブラン」は文字どおり、ソーヴィニヨン・ブラン種だけで作られるヴァラエタル品種名ワイン。爽やかで切れのいい口当たりとボリューム感が、魚介類をたっぷり使った寄せ鍋にぴったりだ。
一方、チリの名生産者サンタカロリーナ社が作る、レゼルヴァ デ ファミリア・シリーズは樹齢100年を葡萄樹のみから生まれる。「一族のための特醸品」として、かつては一般には市販されていなかった。果実味が豊かで、凝縮感に富む。こってりと煮たすき焼きにも太刀打ちできるたくましさを持ちながら、きめの細かい味わいが、バランスのよさを感じさせる。ところで、すき焼きの割り下には、赤ワインをたしておくと、相性がさらによくなる。

‘96バユオー社 ミュスカデ・ド・セーブル・エ・メーヌ シュール・リー“マスター・ドナシャン”¥1,940
‘96ロバート・ヴァイル社 リースリング“カルタ” ¥1,940
 *ワインの価格は1999年当時のものです。

取材協力:丸栄百貨店/サントリー株式会社

和食とワインが出逢う夜には 〜料理との相性の見つけ方〜

  • 2012.01.10 Tuesday
  • 15:57
JUGEMテーマ:ワイン

和食とワインが出逢う夜には

〜料理との相性の見つけ方〜

[東海総研マネジメント 1999年1月号掲載]

 くつろげる男(ひと)から馴染みの割烹(みせ)に誘われたら、ワインのボトルを抱えていく。年末から新年の慌ただしい宴席の間(はざま)に、冬の旬を味わいながら、さしつさされつ…。和食には日本酒と決めないで、大人のカップルが冷や酒のかわりにコップでワイン、という風景には温もりがある。
 そんな夜には、ぐいぐいやれる水のような白ワインが欲しい。魚介類が美味しくなるような、酸味がきりりと爽やかで、そこに塩味やミネラルのニュアンスがあればもっとよい。たとえば、仏ロワール地方のミュスカデ・シュール・リー製法のものや、伊のソアーヴェ。

 ついでながら、カキにはシャブリが定番とされるが、カキとシャブリを合せるなら、酢っぱくて爽やかな手頃なものを選びたい。高級な畑(クリュ)ものでは、華やかな香りとコクがカキの味を殺してしまうから。むしろ、お薦めはミュスカデ。カキのヨード臭と馴染んでくれる。
 
 和洋を問わず、ワインとお料理を合わせるコツはふたつ。味わいが拮抗して引き立て合うものを合せるか、よく似たものを合せるか、である。「肉には赤ワイン、魚には白ワイン」と言われるが、例外も多い。たとえば、マグロやカツオのような赤みのお造り、鰻の蒲焼き、たれの焼鳥には渋くない赤が欲しいし、鶏や豚などの白いお肉料理にはクリーミーな白、霜降りのしゃぶしゃぶにゴマだれならばコクのある白が抜群だ。
 
 ところで、第8回世界最優秀ソムリエの田崎真也さん曰く「コクは曲者」。コクのある白はコクが高まれば値段も高まる。「中くらいにコクがあるものを、と注文しましょう」とか。田崎さん流の料理とワインを合せるコツは、「ワインの色と料理の色を合せること」。したがって、白っぽいお料理が多い和食には、白ワインの出番が多くなる。

 とは言え、和食に白という先入観は禁物。ザ・リッツ・カールトン大阪のソムリエ宮武隆さんは、筑前煮に仏ブルゴーニュ地方の赤の代名詞ジュヴレ・シャベルタンを薦める。ジュヴレ・シャンベルタンの土っぽさ、湿っぽさが根菜類に合うという。思うに、筑前煮は赤い料理である。
 
 和食の席を一種類のワインで通すならば、と宮武さんに尋ねたら、お薦めはブルゴーニュ地方シャサーニュ・モンラッシェ村の白。ワインが冷え冷えのうちは酸味がたってお造りや焼き物に、やがて温度が上がってふくらみがでたら煮物、揚物によく合ってくるとのこと。

 このシャサーニュ・モンラッシェの一級畑モルジェ‘91(D・ガニャール社)をカラスミと合せてみた。長崎からの届きたてをさっとあぶって、スダチを香りだけ振って…。絶妙な取合わせだった。生臭いイメージからは想像しにくいが、塩辛も温めてバターを加えればワインに合う、と田崎さんは語っている。
 こうした意外な相性(マリアージュ)を見つけるには、遊び心がとても大切。作為と偶然がもたらすワインと料理の相性が、素晴らしい味の世界を創るとき、私たちはワインを愛する悦びを知る。

<今月のワインリスト>

 ワインと和食を合せるには、料理のボリューム感をつかみ、そのレベルに合せてワインのタイプを選ぶのがコツ、と宮武ソムリエ。生の食材にはシャープな酸味、お寿司のような料理は大きくて鈍角な酸味、出汁を使う料理は深みとコクに合せて香ばしい風味のワインを、とも。

 シャープな酸味といえば仏ロワール地方のミュスカデ。香りが少なく料理の邪魔にならないし、シュール・リー製法によるものは、アミノ酸の旨みがあるので、和食に合わせやすい。

 一方、大きくて鈍角な酸味といえば、独ラインガウ地方のリースリング。リースリングは甘くて苦手という声も多いが、寿司のシャリや天婦羅の甘みとはよく馴染む。ロバート・ヴァイル社のリースリングは、甘やかな香りとマイルドな酸味がチャーミングな味わい。お酒を飲み慣れない女性からワイン通まで、評価の幅は広い。同社のラインナップの中で、“カルタ”ならば男性にも納得のいく辛口。香りは甘いけれども、きりりとした爽やかな酸味を楽しみたい。

‘96バユオー社 ミュスカデ・ド・セーブル・エ・メーヌ シュール・リー“マスター・ドナシャン”¥1,940
‘96ロバート・ヴァイル社 リースリング“カルタ” ¥1,940
 *ワインの価格は1999年当時のものです。
取材協力:丸栄百貨店/サントリー株式会社

とっておきの夜は普段着で 〜発泡性ワインの気楽な楽しみ方〜

  • 2011.12.19 Monday
  • 09:44
JUGEMテーマ:ワイン

とっておきの夜は普段着で
〜発泡性ワインの気楽な楽しみ方〜


[東海総研マネジメント 1998年12月号掲載]

 クリスマスにはこの世でいちばん好きな人と過ごしたい。部屋をあたためて、飾り棚のグラスを洗って、普段着のままで。そんな夜には迷わずにシャンパーニュを選ぶ。耳を澄ませばピチピチと、踊るグラスの華やぎが人の心も躍らせる。

 そのシャンパーニュも昔はくすんだ白ワインで、「灰色の酒」と呼ばれていた。言ってみればどぶろく。ここに炭酸ガスを閉じ込め、泡のたつ透明の美酒に仕立てたのがドン・ペリニョン…といわれる。でも、本当は、様々な畑の優れたふどう液をブレンドして、シャンパーニュの味を高め、宮廷好みの素敵なお酒にした人らしい。一七世紀のこと、ドンさんは坊さんで修道院の酒庫係だった。後世に、モエ・エ・シャンドン社がその名を称え、自社の格上(プレステージ)の商品を“ドン・ペリニョン”と命名した。ご存じの“ドン・ペリ”である。
 
 ドンさんは立派だが、ドン・ペリはちょっと不届きだ。安売り店にも出回る昨今なのに、特に夜のお店で飲むと請求書がこわい。そもそもシャンパーニュの多くは値段も贅沢だ。ドン・ペリのような格上の収穫年(ヴィンテージ)ものは尚更、ましてレストランやバーでの値段は小売価格のニ〜三倍。気楽に味わえるものではない。

 そこで、シャンパーニュをリビングや寝室で楽しんでみる。とっておきの夜には、洗練の極み“クリュッグ”やロシア皇帝ご用達“ルイ・ルドレール クリスタル”、花柄の色絵ボトルが美しい“ベル・エポック”、白ぶどうだけで作られる“サロン”などを奮発したりして…。

 高嶺の赤ワインも同じように気楽にやりたいけれども、扱いが少しやっかいだ。温度、抜栓のタイミング、デカンタージュ(移替え)、料理。その点、シャンパーニュは和洋中、どんな料理にも合いやすく、お気に入りのワインクーラーさえあれば優雅な晩餐が実現する。

 念のため、特別の演出は別として、発泡性ワインのコルクは音をたてずに抜くのが正しい。音のでる抜き方は、コルクが飛んで危ないから。ナプキンなどで抑えてゆっくりと抜く。炭酸ガスが手のひらを押し上げてきたらコルクを慎重に倒し、ボトルの口の隙間からブスッとガスを放つ。

 さらに念のため。シャンパーニュとはシャンパーニュ地方で作られる発泡性ワインのこと。その他のものをフランスではヴァン・ムスー、イタリアではスプマンテ、スペインではカヴァ、ドイツではゼクト、英語ではスパークリングワインと呼ぶ。

 さて、わたくしにとって最も贅沢なワインは今のところ、シャンパーニュでも偉大なシャトーでもない。ある初冬の夕暮れ、仲間たちと繰り出したヨットの上でわたくしは誕生日を迎えていた。男友だちが操る船のオーナーズデッキに身をあずけ、プラスチック製のグラスで乾杯したのはロゼの発泡性ワイン。カリフォルニア産のスパークリングワインで、二千五百円ほどだった。

 ワインの価値はラベルや値段では決まらない。
 
<今月のワインリスト>
 シャンパーニュは伝統的に黒ぶどうと白ぶどうから作られるが、ブラン・ド・ブランは白ぶどうのみ。エレガントな味わいが身上だ。中でも英国王室御用達ランソン社の“ゴールドラベル・ブラン・ド・ブラン”のふくよかなボトルには、上質のエレガンスが仕込まれている。

 香りも泡粒も柔らかで、繊細な酸味にほんのりと甘い印象が残る。ランソンといえば力強さが特長だが、そのスタイルを超えたブラン・ド・ブラン(白の中の白)。塩のニュアンスや石灰香も豊富で、和の肴にもいろいろと合いそうだ。

 さて、とっておきの夜には偉大な赤ワインも試したい。仏ボルドー地方メドック地区には、1855年から継がれる格付けがある。“五大シャトー”とはこの格付けの第1級であり、5つのシャトーを筆頭に、特に優れたワインたちが第5級までに格付けられている。

 “王のためのワイン”と称するグリュオ・ラローズは第2級。よく熟成すると、芳醇な果実味に、古典的な造りが放つ動物香が溶け合って艶めかしい。’93はまだこなれていないものの、今でもすでに楽しめる。たっぷりと濃いローブ色が大人のクリスマスを祝福する。

‘90ランソン・ブラン・ド・ブラン¥9,700
‘92シャトー・グリュオー・ラローズ¥9,500
*ワインの価格は1998年当時のものです。

取材協力:丸栄百貨店/サントリー株式会社

ワインリストを捨ててしまえば… 〜ソムリエをうならせる注文の仕方〜

  • 2011.11.01 Tuesday
  • 00:00
JUGEMテーマ:ワイン
 

ワインリストを捨ててしまえば…

〜ソムリエをうならせる注文の仕方〜

[東海総研マネジメント 1998年11月号掲載]

昭和の相撲史を「ヒョオショオジョオ」の痛快な響きで彩った元パン・アメリカン航空のジョーズさんは、大変なワイン通だった。自宅に常時百本、有料の倉庫に千五百本をお持ちとか。そのジョーンズさんが大学生の頃、ある女性を口説いた夜のメニューが牡蠣に“シャブリ”、仔羊に“ムートン・ロートシルト”という本格派。女性はジョーンズさんの奥さまになった。


 ワインの魅力は変幻する多様さにある。生産地、品種、収穫年の天候、作り手の考え方と腕、熟成の時間。さらに料理との相性によってつむぎ出される味わいは移り気で、限りなく奥深い。その壮大な世界からジョーンズさんはときめきの一夜にふさわしい選択をして、ハッピーエンドのチャンスをつかんだのだ。

 それにしてもワインリストを開くと、呪文のような横文字が並び、カタカナで読む発音は舌を噛めと言わんばかり。どうすれば今夜のひと瓶を選べるというのか。エスコートされたバーで、ワインリストを手に思いあぐねる男性たちを見るたびに、なんだか申し訳ない気分になる。

 でも、どうぞそんなに難しく考えないで。ワインは人間関係を深める香辛料のようなものだ。ワインリストを捨てて、もっと自由に選び楽しめば、連合いや恋人や友人との距離がどんどん小さくなっていく。
 
 
たとえば、ワインを肴にして季節感だって分かち合える。秋が深まれば「落ち葉の香がするものを」、冬の寒い日ならば「心温かくなるものを」。ロマンティックな言い回しに「柄でもない」の声があがれば大成功である。きっと場が盛上がる。

 
また、ひも解いてみるとワインにまつわる逸話は多い。「マリー・アントワネットが愛したワインを」と頼めば、気の効くソムリエは“ピュイイ・フュメ”を供してくれる。フランスの庭園と呼ばれる美しいロワール地方の爽やかな白だ。

 
ナポレオン愛飲のシャンパンといえば“モエ・シャンドン”。作家デュマが「脱帽し、ひざまずいて飲むべし」と嘆ずる白の最高峰“ル・モンラッシェ”。旅立つ日には“ボー・セジュール(よい滞在を)”、ラベルに帆船の“ベイシュヴェル”。バレンタインデーやふたりの記念日には大きなハートが嬉しい“カロン・セギュール”。可愛い人の頭文字にちなんで、白の“R(エール)”、“Y(イグレック)”、上質のシャンパンには“S(サロン)”もある。

 
今夜のひと瓶に納得するには、赤か白か、辛口か甘口か、軽いか重いかといった好みと予算を伝えて、あとは、その日の状況と気分次第。独創的な頼み方をしてソムリエを困らせたり、うならせたりしてみたい。

 
ところで、若き日のジョーンズさんが奥さまに捧げた本格派メニューにも種明かしがある。シャーロック・ホームズの作者コナン・ドイルが短編に描いた口説きのメニューの真似をしたのだ。小説や映画に知恵を借りるのも立派な知恵である。


今月のワインリスト>

 

11月のワインを季節感で選ぶと、第3木曜日解禁のボジョレー・ヌーヴォーになる。ブームが去り、レストランやバーで注文するのは気恥ずかしいものの、はつらつとした果実の味わいは捨て難い。


 ジョルジュ・デュブッフは、フランスのいち地酒を名実ともに世界のボジョレーへと格上げし、ヌーヴォーのお祭りを広めた人だ。ボジョレーの帝王が作る「バナナ味をベースにした、酸っぱいキャンディ」の味の「踊りだしたくなるような」ヌーヴォーを一度は試してみよう。

 
11月といえば毎年、仏ブルゴーニュのボーヌの町で“オスピス・ド・ボーヌの競売会”が開かれる。これは1859年以来の慈善オークションで、ボーヌ修道院(オスピス・ド・ボーヌ)に寄進された畑のワインが競り落とされる。チャリティなので割高だが品質は高く、競りの価格がその年のワイン相場を左右する。

 ムルソーの白は誰にでも好かれる、如才のないワインだ。J・アンブロ寄進のムルソー オスピス・ド・ボーヌ
’90は口に含むと柔らかく、まもなくするとたくましい酸が濃厚な余韻をつれてくる。したたかなこの熟女は、やや野暮ったいところがムルソーらしい。

 

98ボジョレー・ヌーヴォー(ジョルジュ・デュブッフ)¥2,180

90ムルソー オスピス・ド・ボーヌ(キュベ ジャン・アンブロ)参考商品

 *ワインの価格は1998年当時のものです。

取材協力:丸栄百貨店/
 サントリー株式会社

淑女のためにお毒見を 〜粋なホストティスティングの仕方〜

  • 2011.10.13 Thursday
  • 13:18
JUGEMテーマ:ワイン

淑女のためにお毒味を

〜粋なホストテイスティングの仕方〜

[東海総研マネジメント 1998年10月号掲載]


 はじめてのお誘いはレストランが嬉しい。ムードがあるし、あけすけな雰囲気になりすぎないから。けれども「レストランは緊張する」「テーブルマナーやワインの作法が面倒くさいから苦手」という男性も多くて、残念だ。少しくらい作法が間違っていても、商談や会議の席だと思って、同じくらい堂々とふるまってしまえばたいていは様になるのに。

 
そもそもマナーやら作法の裏には守るべき意味がある。それさえ心得れば十分だ。例えば、ホストテイスティングの意味は「確かめる」こと。まず、ソムリエが注文のワインをもってきて、ホスト(もてなし側)に銘柄やヴィンテージ(収穫年)に間違いがないか、キャップシールがきちんとしているかを「確かめる」よう、それとなく促す。ホストが「よし」とばかりにうなづくと、抜栓がはじまり、グラスにちょっぴりだけワインが注がれる。この“ちょっぴりワイン”のお味見がホストテイスティングだ。

 ホストは注がれたワインをほんのひと口だけ含み、傷んでいないかを「確かめる」。でも、それはとても難しいこと。経験則では、ソムリエでも才能と経験にめぐまれていないと、確かな判定ができないと思う。

 
そこで、ホストテイスティングはお味見というより、お毒味の儀式と考えたほうが“粋”である。今宵の淑女の杯に妙な味が混ざっていないか、身を呈して「確かめる」ふりをするのだ。まじめな顔つき、真剣な態度。最後に頼もしく「うん」とうなずく。思いっきり頼もしく、である。無駄なことばは要らない。

 
最近はワイン通の女性も増え、そうした彼女と同席すると、気をつかってホストテイスティングを譲る男性がいる。女性としては身を呈するお毒味は、やはり男性にして欲しい。

 また、スワリングといってグラスをぐるぐる回す姿をときどき見かけるが、あれは「ホストテイスティング(お毒味)」ではなく、「テイスティング(利き酒)」。ちゃんとしたレストランでのホストテイスティングではしないほうが“粋”だと思う。

 
舌が確かなら、不自然にすっぱいとか、カビっぽいと感じることがある。そうしたら、ソムリエに感じたままを申し出て、確かめてもらう。本当に傷んでいれば、交換となる。交換は原則として同じ銘柄、同じヴィンテージでなされる。味の好き嫌いで交換を求めると料金が伴うので、ご了承を。念のために、ホストテイスティングにかぎらず、ワインを注がれるときにはグラスに手をふれないのが流儀だ。

 大人の男女にとって、レストランでの食事はホストテイスティングも含めて、ふたりの物語の大道具、小道具だ。レイディズ・ファーストに徹して、すてきな彼女との千夜一夜を小粋に演出していただきたい。


今月のおすすめワイン

 

 フランスワインの代名詞のようなシャブリ。でも、シャブリといえども“松”もあれば“梅”もある。シャブリとはブルゴーニュ地方の村名。ブルゴーニュワインは地方より村、村より畑という風に格があがる。シャブリは村名だから、さらなる“松竹梅”は畑のランクと収穫年(ヴィンテージ)、そしてで作り手(ドメーヌ)で決まるのだ。特級畑(グラン・クリュ)か一級畑(プルミエ・クリュ)なら安心だが、優秀な作り手の名前を覚えたい。
 
 今月おすすめの白はシャブリ地区の一級畑
モンテ・ド・トネール。市長を務めた家柄のヴォコレ社が作る。輝く浅黄色(ペールグリーン)、青りんごの香に妖しくからむミネラル香。生き生きとした酸味に堅固な味わいは「ザ・シャブリ」と呼びたい趣だ。

 赤はジュヴレイ・シャンベルタン村の一級畑
レ・シャンポー。H・ジョフロワ社が作る。レストランでジュヴレイという頭をうっかり忘れて、「シャンベルタン!」と注文したら大変。シャンベルタンは皇帝ナポレオンも愛した特級畑で、レストラン価格はジュヴレイ・シャンベルタンの数倍。特別な女性との飛びきりの夜だけに捧げたい。

 

'96シャブリ‘モンテ・ド・トネール’(ロベール・ヴォコレ)¥3,400

'96ジュヴレイ・シャンベルタン‘レ・シャンポー’(アルマン・ジョフロワ)¥7,500

*ワインの価格は1998年当時のものです。

取材協力:丸栄株式会社/サントリー株式会社

calendar

S M T W T F S
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
<< October 2017 >>

selected entries

categories

archives

recent comment

  • STAP細胞疑惑、本日の記者会見! 小保方さんだけが再現できるのであれば、それは科学技術ではなくて技…。熟練した実験者から科学者へ成長するために、襟を正して、がんばれ、センス・オブ・ワンダー!
    Pr.sonoma (04/30)
  • STAP細胞疑惑、本日の記者会見! 小保方さんだけが再現できるのであれば、それは科学技術ではなくて技…。熟練した実験者から科学者へ成長するために、襟を正して、がんばれ、センス・オブ・ワンダー!
    無名 (04/30)
  • STAP細胞疑惑、本日の記者会見! 小保方さんだけが再現できるのであれば、それは科学技術ではなくて技…。熟練した実験者から科学者へ成長するために、襟を正して、がんばれ、センス・オブ・ワンダー!
    無名 (04/29)
  • 歌ごころ vol.6 暗くなるまで待って
    Pr.そのま (09/24)
  • 歌ごころ vol.6 暗くなるまで待って
    まぁ〜ちゃん (09/17)
  • 歌ごころ vol.6 暗くなるまで待って
    Pr.そのま (09/16)
  • 歌ごころ vol.6 暗くなるまで待って
    まぁ〜ちゃん (09/16)

recent trackback

recommend

recommend

recommend

recommend

LOVE SONG
LOVE SONG (JUGEMレビュー »)
後藤叶圭,後藤叶圭/柳沢和夫,柳沢和夫
山下達郎のバックボーカリストとして知られる友人、後藤叶圭さんの二作目のアルバムです。8曲目『さよなら仕度』はPr.そのまの作詞です。

recommend

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM