深田甫先生、2020年3月26日にご逝去。ホフマン全集の翻訳で知られる恩師との永遠の逢瀬を慈しみます。合掌
- 2020.04.02 Thursday
- 11:18
JUGEMテーマ:別れ
今日の訃報:永遠の逢瀬。魂を育ててくれた師が、心不全で亡くなりました。3月26日夜、お子さま、お孫さまに看取られ、静かに旅立たれたそうです。幻想文学の奇才ホフマンを22年かけて翻訳し、全集を残した哲人であり、フジTVの「夕(ゆう)にゃん先生」として知られた時もありました。
18歳の春、同級生から「ドイツ文学研究会」に入らないかと誘われて、顧問だった師と出逢いました。研究会が解散した後も、鎌倉のご自宅をしばしば訪ね、温和な口元からほとばしる激しい言葉のしぶきを浴びました。分かることもありましたが、分からないことのほうが多く、それでも、熱いしぶきは滝のように私を打ち、魂を目覚めさせました。
20年と少し無沙汰をし、数年前のバレンタインデーの季節に再会したら、師は仙人のように枯れつつも、情熱の埋火をますますたぎらせていました。「奥さま」に先立たれた老師と恋に落ちるのも悪くないという妄想がよぎり、智恵の泉からほとばしるしぶきを口述でしたためたいと思いました。それなりに、構想も温めはじめました。にもかかわらず、師の肉体のはかなさと私自身の肉体のほころびに思いいたれず、構想は夢の途中になりました。
師が亡くなった翌々日、恵那の田舎家に泊まっていた私は、三和土の硝子戸をかすめる影を見ました。家守の霊と思いましたが、私に別れを告げにきた師の魂だったかもしれない、そうであって欲しいと願っています。師の訃報をまだ、受けとめきれていない私がいます。肉体が仮の宿だとすれば、そして、魂の世界に時空間がないとすれば、師の逝去によって、私は師にいつでも逢えるようになりました。今生でも彼岸でも来世でも、師と永遠の逢瀬を慈しめることを熱望します。
合掌。