歌ごころ vol.1 さよなら仕度

  • 2009.03.26 Thursday
  • 19:09
JUGEMテーマ:別れ

さよなら仕度

 

後藤叶圭

曲 くまきとしろう

詞 悠木そのま


[1984年作/2007年 アルバム『Love Song』収録]

 

 

朝刊が派手に ポストに落ちて

あなたが大きく寝返りを打つ

目を覚まさないで もう少しだけ…と

私は背中をかたくする

 

さよならがユメならいいのにね

さよならがウソならいいのにね

ああ、一番列車よ

窓を叩かないで…

 

 

うなじがひやり 毛布をはいで

あなたはやっぱり さよなら仕度

あれこれと身づくろいする気配

寝たふりしたまま 聞いている

 

さよならがユメならいいのにね

さよならがウソならいいのにね

ああ、なぐさめ 残すな

メモは捨てていって…

 

 

さよならがユメならいいのにね

さよならがウソならいいのにね

ああ、涙よ こらえて

あなた 出て行くまで…



LOVE SONG
LOVE SONG
posted with amazlet at 09.03.26
後藤叶圭 後藤叶圭/柳沢和夫 柳沢和夫
インディーズ レーベル (2007-09-23)

http://chitei-records.seesaa.net/article/48746767.html

その時、ワインを飲みほして vol.2 父たちに捧げる「仮面の男」

  • 2009.03.18 Wednesday
  • 09:45
JUGEMテーマ:キャリアデザイン

父たちに捧げる「仮面の男」
〜父の愛に守られて巣立つ〜
 

                                                    [2002.1.27執筆/2009.3.18改定]
                                                                                未掲載記事


 1991年10月1日、私の父は58歳で人生の幕を下ろした。父を失ってはじめて、いかに父に守られて生きていたかを知った。そして、社会の現実に直面し、それらに立ち向かわなければ生き抜けない事実を学んだ。父は死をもって、私を自立させてくれた。

 
父を想うとき、映画『仮面の男』の美しい映像がよぎる。大好きなレオ様ことレオナルド・ディカプリオが2役の主役を演じ、ハリウッドとフランスの芸達者たちが17世紀のフランスを舞台に大暴れする歴史スペクタクルである。


 17世紀のフランスといえば、太陽王と呼ばれるルイ14世の治世であり、暗黒の中世にあって光明射す時期とされている。けれども、『仮面の男』では大胆に、史実の書き換えを行った。本当のルイは大変な暴君だったというのだ。

 暴君ルイは飢饉による飢えで苦しむ民には腐ったリンゴを与え、連日連夜の宴に酔いしれている。美しい女性を愛人にしては捨て、私利私欲のために人を殺すのも厭わない。そんなルイにはフィリップという双子の弟があった。フィリップは、血族の争いを怖れたルイによって鉄の仮面を被せられ、バスチーユ牢に幽閉されていた。

 ルイが遊興の日々を過ごす水面下で、イエズス会のリーダーが”革命”の計画を進めていた。獄中のフィリップと暴君ルイを入れ替え、フィリップを理想の王に仕立てるという”血を流さない革命”である。

 リーダーはかつて銃士として名を馳せた男、『三銃士(アレキサンドル・デュマ作)』のアラミスだった。彼は三銃士の仲間のポルトス、アトスに加え、従者だったダルニアンに革命の協力を呼びかける。アラミス、ポルトス、アトスの3人はすでに引退の身だが、後輩のダルタニアンは王宮の銃士隊長として暴君ルイに誠心誠意、尽くしている。 ”血を流さない革命”への参画を乞われて、きっぱりと断る。

”誓いは貫いてこそ誓いだ。
      ルイといえども見捨てられない。命にかえても国王を守る”


 名優ディカプリオが演じるルイの暴君ぶりはおぞましいばかりだ。それでも、ダルタニアンはアラミスたちの陰謀から、ルイを守り続ける。間一髪の国王誘拐の邪魔をして、フィリップを捕らえたのもダルタニアンだ。

 そんなダルタニアンの誓いは、忠誠心からばかりではなかった。彼とルイの間には、秘められたつながりがあったのだ。それは若き日のこと、ダルタニアンは皇太后アンヌと許されぬ恋に落ち、ルイとフィリップが生まれた。双子を嫌う習慣から、弟フィリップは闇へと葬られる。ダルタニアンは銃士として、王位継承者であるルイを守り続けてきた。


 ふりかえれば、銃士を引退し悠々と暮らすアトスをダルタニアンが訪ねるシーンでのこと。旧友の久しぶりの訪問を喜び、ワインをふるまうアトス。これを受けるダルタニアン。アトスは成長した息子の近況を誇らしげに語る。

 ひと息にワインを飲みほして、ダルタニアンはアトスに告げた。暴君ルイがアトスの息子を戦さの最前線に送ろうとしていると…。ルイは息子の恋人に横恋慕し、恋敵を抹殺しようと考えていた。アトスは逆上し、ルイを罵倒し、ダルタニアンに詰め寄る。

”父親の気持ちが分かるか?
       安らかに眠る子の髪に口づけ、成長を見守る気持ちが!”

 
ダルタニアンの苦い表情。

”父である喜びを味わったことはない”

 彼は、目の前にいる息子を抱きしめることも口づけすることも許されず、せめて忠誠心という仮面を被って、国王である息子に仕え、身を呈して守ってきたのである。しかも、立派な王に育って欲しいと願う息子は、尊敬されない暴君だ。だからこそ、ルイを見捨てられるはずがない。そこにあるのは忠誠心ではなく、父の愛、父としての責めである。


 そこに、もうひとりの息子が現れた。志に生きるアトスに「王の心をお持ちだ」と言わしめた、フィリップだ。ダルタニアンには、生まれた子が双子だったことを知らされていなかった。突然現れた、理想の王たる資質をもつ息子…。ダルタニアンは父の誇りを知り、フィリップの命を守るために、ルイの刃に倒れる。

”こんな最期を望んでいた”

 皇太后への愛、先王と祖国への裏切り、息子と呼べない息子への責め…。ダルタニアンは国を守り、国王を守り、息子を守り続けた人生に幕をおろし、静かに息を引き取る。辞世の言葉はただ「我らはひとつ、偉大なる王のために」

 ルイは隠遁させられ、フィリップは慈悲深いルイとして王位に就く。ダルタニアンが命を賭して助けた息子は、太陽王ルイ14世へと巣立ったのだ。

 父たちは仮面をかぶる。それは鉄の仮面のように、父の想いを隠してしまう。けれども、父たちは鉄の仮面の下から、子どもたちを見守っている。いつも側にいなくても、父のまなざしはいつも私たちに注がれている。幼い子どもたちはおおかた、父のまなざしに気づかない。けれども、その守りがあればこそ、子どもたちは健やかに育ち、やがて巣立っていけるのである。

 巣立ちの日、父たちは一抹のさみしさとともにわが子を誇りに思うだろう。そして、父であることの喜びをかみしめるに違いない。遠い世界へ旅立った私の父に、巣立ちの姿を見せられなかったことが心から悔やまれる。


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その時、ワインを飲みほして vol.1 心はいつも「ローマの休日」

  • 2009.03.17 Tuesday
  • 14:43
JUGEMテーマ:キャリアデザイン

心はいつも「ローマの休日」
〜使命に生きる人生を選ぶ〜

いまがもしも辛いのなら
それは、いまを越えて
幸せな未来へ近づくための試練だから
 
泣きたいときには、空をあおごう
きっと道はつづいている 
2013.1.5   


[2002.12.24執筆/2008.3.17改訂]
 2003.1 UFJ銀行サイト”インフォウェーブ”掲載記事


ローマをいまだ訪れたことがない。ビジネスで訪ねる縁もなく、働き盛りが休暇を過ごすには遠すぎる。けれども、ローマ! その響きは甘く、少しだけほろ苦い。目を閉じれば、心のスクリーンに続く石畳を男女ふたり乗りのスクーターが迷走する。女は故オードリー・ヘップバーン、男はグレコリー・ペック。監督ウィリアム・ワイラーの名画『ローマの休日』を初めて鑑たのは高校生の頃、テレビでの字幕放送だった。

オードリー扮するアン王女は公務にあぐね、訪問先ローマの官邸を抜け出して街へ出る。新聞記者ジョー・ブラッドレーはスクープを狙い、身分を隠して、王女のたった1日の休日をエスコートする。ローマの名所、市井の暮らしぶりがテンポよく流れる。ふたりは恋に落ちる。

あの頃は、この映画を「身分違いのせつない恋物語」「大人のおとぎ話」と思って観ていた。モノクロームのローマは美しく、メロドラマにはうってつけだ。オードリーは当時24歳、可憐な容姿、無邪気なしぐさ、気品あふれる笑顔。初主演のこの映画でアカデミー賞、ゴーデン・グローブ賞の各主演賞を受賞した。共演のグレコリー・ペックもスマートな演技で、初々しいヒロインを支えた。

オードリーが63歳で他界した1993年、BS放送が追悼特集を編んだ。十数年ぶりにこの映画を鑑た私は、30代半ばに近づいていた。『ローマの休日』はもう、おとぎ話には見えず、ひとりの女性の自立を描いた秀作に見えた。

わけもなく涙があふれた。男のアパートでテーブルワインを飲むシーンで、別れのキスシーンで、そして何よりも官邸に戻った王女と3人の侍従に対峙するシーンで! 24時間の不在をとがめる侍従の言葉をさえぎって、アン王女はきっぱりと言い放つ。

”祖国と王家への責務を思わなければ、今夜、ここへは戻ってきませんでした”
 

その瞬間、大きな瞳がゆらゆらと揺れる。崩れ落ちそうな心・・・。心の揺らぎを抑えるように、唇がきりりと引き締まる。凛々しい立ち姿だった。彼女は働く人として自立したのだ。決められた公務を決められたとおりに繰り返す、操り人形のような日々に疲れて街へ出た彼女は、1日の休日を経て殻を脱いだ。それまでと変わらない毎日を、明日からポジティブに生きていくだろう。

そして今年(2002年当時)、オードリーの没後10年を迎える。録画した追悼特集を再びデッキにかけて、『ローマの休日』を鑑る。美しいローマ、美しい恋人たちがいきいきとよみがえる。

アン王女は官邸に戻ったその夜、夜食のミルクとクッキーを拒み、侍女の伯爵夫人を退室させて、窓辺に佇む。街は近くて遠い。

それはつい先ほどまで、つかの間の休日を楽しんだ街だ。つい先ほどまで、愛しい男といた街だ。彼女は男に、「料理は上手いのよ」「お掃除もアイロンがけにも自信があるわ」「誰かにしてあげるチャンスがなかっただけ」と強がった。男は「引越しをしなきゃいけないね、キッチンのある部屋へ」と悲しげに茶かした。「そうね」と細く答えて、分厚いコップの赤ワインを飲み干した…。

この時、彼女は王位継承者としての人生を選んだのだ。父王が40年間務めてきた責務、生まれついて負った人生を自らの意思で選ぼうと決めた瞬間だ。ひとつの人生を選び、もうひとつの人生を捨てた。

選ぶことは捨てること・・・。40歳を過ぎた私(2002年当時)の目に、人生のせつなさが映った。新たな涙があふれた。ふたりの恋は麻疹
(はしか)だったかもしれない。ポーカーで小遣いを稼ぐ男と箱入りの王女は似合わない。恋は終わったからこそ美しい。

けれども、彼女にとって、その恋の終わりはブラッドレーとの別れを意味するものではなかった。彼を含め、これから出会ったかもしれないすべてのブラッドレーとの平凡な人生との別れ、カフェでお茶を飲んだり、ウィンドウショッピングをしたり、雨にぬれながら歩いたり、貧しくても平凡な人生との別れであった

ワイラー監督は、選べばこそ捨てねばならぬ人生と、その痛みを描くことに成功した。

映画は記者会見のシーンで幕を引く。記者たちに「今回の訪問旅行でもっとも素晴らしかった都市は?」と尋ねられ、彼女は言葉につまる。侍従に促され、「いずこも忘れ難く」とお定まりの社交辞令を語り始め、「優劣を決めるのは難しく・・・」と途切れる。

”ローマ!” 

会場のざわめきがさざなみのように広がる。自らの意思で王位継承への道を選んだアン王女は、もはや操り人形ではない。自らの意思を伝える勇気も持ち合わせている。会場には新聞記者として訪れたブラッドレーの姿もある。見つめ合うふたり・・・。

”私はこの滞在を、天国に召された後まで慈しむでしょう”

 やがて、きびすを返し立ち去る頬に涙が光る。こぼす涙の数だけ、彼女はこれからも強くなっていく。そして、いつどこで誰といても自由である。ブラッドレーと過ごしたその日のように、心はいつも『ローマの休日』だ。 

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山下達郎のバックボーカリストとして知られる友人、後藤叶圭さんの二作目のアルバムです。8曲目『さよなら仕度』はPr.そのまの作詞です。

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