心ときめく春なのだから 〜アウトドアに似合うワイン〜
- 2012.03.12 Monday
- 15:58
心ときめく春なのだから
〜アウトドアに似合うワイン〜
[東海総研マネジメント 1999年3月号掲載]
陽射しがぽかりぽかりと明るくなると、外の空気が恋しくなる。まだまだ風は冷たいけれど、そろそろピクニックに出掛けよう。もちろん、バスケットにはワイン。こんな時には、カリフォルニアワインを連れて行くのが、私の流儀だ。
自宅から1、2時間のドライブでたどり着ける奥三河の山間は、鮎やら猪やら、季節の味が豊富である。鮎の季節にはフュメ・ブラン種の白。ボタン鍋には土臭いメルロー種の赤。太陽をたっぷり浴びたカリフォルニアのワインたちには、隠し味のように甘みがあって、奥三河の味噌味にも結構馴染んでしまう。
もっとも、カリフォルニアワインだけがことさらピクニック向きというわけではない。カリフォルニアは乾いた太陽と爽やかな風の国。その太陽や風に身をさらして巡った、ナパやソノマのワイナリーで作られるワインは、私にとっては、素敵なピクニックの象徴なのだ。
ところで、アウトドアといえばバーベキュー。仲間のために美味しいワインを探したくて、恵比寿ガーデンプレイス内のワイン専門店「カーブ・タイユバン」のソムリエ荻原初男さんに相談してみた。
荻原さんによれば、アウトドア向きのワインとは、第一に価格が極端に高くないもの、第二に酸味が柔かくてコシがあるもの、第三に野性味のあるもの、そして、人気の赤に加えて白も1種は用意したい、とか。
具体的には、赤ならば注目の南仏ラングドック、ルーションやコルビエール、白ならば仏ローヌ。荻原さんのお奨め銘柄は、赤はコルビエールのシャトー・ラストゥールに加えて、ブルゴーニュ・ボージョレ村のムーラン・ナヴァン・ヴィエイユ・ヴィーニュ(ジャナン社)。ボージョレはどちらかといえば軽い赤だが、これは樹齢70年のガメイ種から作られる珍品で、「究極のボージョレ」。野性的な香りと力強さが、濃厚なお肉にも負けない。一方、白はフランスでも手に入りにくいケランヌ村の白。濃厚な香りとキレのよい酸、腰の強さが魅力であるという。
さて、桜のつぼみがふくらむと、公園の縄張り争いがはじまる。コンビニでポテトチップやおかき、お弁当を買い込んだら、花見でワイン。こんな時には、ロゼのワインを調達したい。桜の花びらと仲良しの色合い、気軽なメニューにも合うオールマイティな味わい。ロゼ・ダンジュの甘い印象が強いせいか、男性は嫌うけれども、ロゼは便利なワインである。仏プロヴァンスのロゼなら、酸味はやや強いが、決して甘くない。
名古屋パルコ南館にもお目見えしたワインショップ「エノテカ」の本社マネジャー阿部健太郎さんは、発泡性のロゼならばさらにお洒落、と薦める。クレマン・ド・ブルゴーニュ(パリゴ社)やブベ・ブリュット・ロゼ(ブベ社)など、アウトドアには値段も味わいも手軽な方が似合う。
さあ、心ときめく春なのだから、大好きな誰かを誘って、何んにも考えないですいすい飲めるワインを選んで、外へ出掛けよう。もしも、あなたがワイン通でも、今日だけはウンチクは部屋に置き去りにして。
<今月のワインリスト>
アウトドアには、明るいイメージのワインを選びたい、という丸栄百貨店の美人ソムリエール西藤美佐緒さん。食事を選ばない屈託のなさも必要、というわけで、にカリフォルニアとイタリアから、「らしいワイン」を選んでくれた。
まずはカリフォルニアから、フェッツァー社ベル・アーバー・シリーズのホワイントジンファンデル。アメリカならではの葡萄品種ジンファンデルから作ったこのロゼワインは、イチゴのようなフレッシュな香り、甘酸っぱい口当たり。まるで、アメリカの農家の奥さんのように大柄でいて、どことなくチャーミングな味わいがアウトドア向きだ。
そして、イタリアのすいすい飲めるワインといえば、オルヴィエート地区の白。香りも飲み口も癖がなくて、アウトドアの気軽なメニューにもよく合う。オルヴィエートといえば辛口白ワインが中心だが、アマービレは「中甘口」。
但し、中甘口とはいえ、辛口好みの男性にはやはり甘い。でも、西藤さんによれば、買い物に来て「あまり甘くないワインを」と所望する女性に、このアマービレを薦めると、たいていは再購入につながるという。男と女の甘い辛いは、恋と一緒で微妙なものだ。ワインを嗜みはじめた彼女のために、ぜひともご調達をお勧めしたい。
'97 ベル・アーバー ホワイトジンファンデル(フェっツアー) 1,170円
'97 オリヴィエート クラシコ アマービレ(ルフィーノ) 1,260円
*ワインの価格は1999円当時のものです。
取材協力:丸栄百貨店/サントリー株式会社